日本で一般的に育てられている暖地型芝は、夏は青々と茂っていますが冬になると休眠し枯れてしまいます。これは暖地型芝の性質上仕方のないことですが、どうしても景観が悪くなってしまいます。

一方でゴルフ場や競技場の芝生が一年中青いのは何故でしょうか。それは冬場に青くなる寒地型の芝を同じ土地で育てる「オーバーシーディング」を行っているからです。

目次

    オーバーシーディングで年中青い芝生になる

    オーバーシーディングとは、芝生の上に芝の種をまいて育成する方法です。

    芝生の補修にも使われる手法ですが、日本では主に育てられている暖地型芝の上から寒地型芝の種をまくのが一般的で、「ウィンターオーバーシード」と同義として言われます。

    これを行うと暖地型芝が休眠し冬枯れしている間は寒地型芝が茂り、一年中青い芝生を作ることができます。

    鮮やかな芝生が季節で切り替わっている

    オーバーシーディングを行うと、夏は暖地型の、冬は寒地型の芝が青々としている状態になります。

    寒地型芝は気温が22℃以上になる時期が長いと夏枯れしてしまいます。そのため日本の場合では、東北地方以南では寒地型芝の通年育成は難しいとされています。

    一方で寒地型芝は冬の寒さには強く、15℃前後が適温で0℃以下の気温でも青く茂りますが夏の暑さには耐えられません。

    その習性を利用して、夏場に強い暖地型芝が冬に向けて休眠する時期に種をまき発芽させます。そして、夏に寒地型芝が枯れると暖地型芝が育っており常に鮮やかな状態を保つことができるのです。

    休眠中の夏芝を保護する役割もある

    オーバーシーディングには景観のキープ以外にも重要なメリットがあります。それは、冬場の暖地型芝の保護です。

    秋から冬にかけて(気温が15℃を下回っている頃)、暖地型芝は休眠に入り生長が止まります。休眠中は葉や茎をのばす機能はなく、冬枯れした葉に覆われた状態で根を守り、暖かくなるのをじっと待っています。

    オーバーシーディングをするとこの時に、上にまいた寒地型芝のランナーが暖地型芝の根を保護してくれるのです。また、芝生の密度が上がることで雑草の侵入も防ぐことに繋がります。

    オーバーシーディングのやり方

    オーバーシーディングは、実施するタイミングがとても重要です。

    寒地型芝が発芽するタイミングを逃さずに種をまくこと、春になって寒地型芝と暖地型芝を切り替える作業(トランジッション)を行うことが重要なポイントになります。

    また、寒地型芝の手入れのため、冬場も芝生の作業を行う必要があります。

    寒地型芝の種まきは9月下旬ごろ

    秋頃(9月下旬~10月)に寒地型芝の種まきをします。この頃は気温が15℃前後となり暖地型芝が休眠を開始し、かつ寒地型芝の発芽生長適温となる時期です。

    まず暖地型芝を地面が見えるくらい(芝丈10㎜を目安)に刈り、その上から寒地型芝の種をまきます。この時に種のまきムラが出てしまったときのために、少し種を残しておきましょう。レーキやブラシでまいた種を地面に落とし、目土・施肥します。

    種をまいてから1~2週間は土が乾かない様に水やりをし、1カ月くらいは芝生にもなるべく入らないように養生して育てます。種まき後2~3週間ほどで寒地型芝が生えそろい、オーバーシーディングが完了します。

    冬場は寒地型芝の手入れをする

    暖地型芝は休眠しているので伸びませんが、寒地型芝は成長しているので手入れが必要です。発芽した寒地型芝の芝丈が30㎜を越えたら、芝刈りをはじめても良いでしょう。

    地面の乾き具合を見ながら週1~2回程度の水やりを行います。ただし、春のトランジッションがあるので肥料を与える場合は量や時期に注意しましょう。寒地型芝が元気すぎると、トランジッションの時にうまく枯らすことができません。

    3月頃には肥料を与えないようにしましょう。

    春の切り替え作業(トランジッション)

    春になったらトランジッションを行います。これがオーバーシーディングで一番難しいポイントで、タイミングが遅れると暖地型芝の生育が悪くなってしまうので気をつけましょう。

    4~5月を目途に、寒地型芝を10㎜以下に刈りこみ軸刈り状態にして枯らします。寒地型芝が枯れることで休眠していた暖地型芝に日光が当たるようになり、新芽が発芽できる状態になります。

    この後にサッチング・エアレーションなど暖地型芝の更新作業を行います。

    サッチングについて教えてください。頻度ってどのくらいで行うものですか?

    ふかふかな芝生を育てよう!エアレーションで根がみるみる健康に

    オーバーシーディングのデメリット

    一年中緑色の芝生を楽しむことができるオーバーシーディングにもデメリットがあります。

    暖地型芝は一度張ったものをそのまま育成しますが、寒地型芝は年ごとに種をまく必要があります。さらに、休眠期のオフシーズンがなくなるので手入れが必要となり、管理の手間やコストが通年でかかることが挙げられます。

    オーバーシーディングにおすすめの芝の種類

    オーバーシーディングは芝の種類選択も重要です。

    競技場などでは暖地型芝西洋芝のバミューダグラスやティフトン419が使用されており、オーバーシーディングの実例があるので安心して行うことができます。

    一方で日本芝は、西洋芝よりも成長スピードが遅いため寒地型芝に邪魔されて弱る場合があるのであまり適していません。

    すでに高麗芝やTM9などを育成していてオーバーシーディングを検討している場合は、オーバーシーディング用に調整されたサツキワセという品種があるのでそちらで試してみましょう。

    とくに寒地型芝は1年で枯れるように短年草で、かつ成長が早い品種がおすすめです。成長スピードによって相性もあるので、ベースの暖地芝に合った品種の種を使いましょう。

    寒地型芝は西洋芝がほとんどで、その成長スピードに負けない品種がオーバーシーディングに向いています。

    ペレニアルライグラス

    バロネスダイレクト本店より

    オーバーシーディングには、種まき後の発芽生長スピードが早いライグラス類がよく使用されます。暑さに弱く短年草の品種ですが、踏まれるのに強いので競技場などで使われます。

    ペレニアルライグラスの種は1㎏あたり1,000~1,500円が相場です。

    イタリアンライグラス

    イタリアンライグラス(アニュアルライグラス)は特に一年生の上耐暑性が低いのでオーバーシーディング初心者におすすめです。

    種は1㎏あたり1,000~1,500円ほどですが、品種によっては高くなります。

    サツキワセ

    高麗芝やTM9などを育成していてオーバーシーディングを考えている人にはサツキワセをおすすめします。

    サツキワセはバミューダグラス類だけでなく日本芝のオーバーシード用の品種です。

    こちらは国内で育成されたペレニアルライグラスとイタリアンライグラスとの交配品種です。初期育成スピードも速く、暑さに弱いためトランジッションもスムーズなところが魅力です。

    サツキワセの種は1㎏あたり1,500~2,000円が相場です。

    まとめ:オーバーシーディングはコストはかかるがその分美しい

    性質の違う2種類の芝を育成することで、通年で青く鮮やかな芝生を作ることができます。

    オーバーシーディングをすることでベースとなる暖地型芝を保護することもできるので、景観の良さと合わせて一石二鳥の良さがあります。

    芝の種類の選択や季節の移り変わりに気を配る必要があるので、試行錯誤しながらベストな状態を模索しましょう。

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